Cold 2

深い深淵の中で見つけたものは

真っ暗な闇だけ

闇の中で捜し求めたものは

一筋の……光……

光の中に浮かぶものは

愛しい人の眩しい笑顔……

 

 

 

 

 

 

 

心の底から安らぎを感じたことなどなかった。

自分の周りはどこも彼処も汚れていて、綺麗な所などどこにも無い。

そう思っていた。

 

醜い子……忌々しい化け物の手……呪われた左目……

 

 

「どんなに醜い人間でも、笑ってりゃ少しはマシに見えるもんさ」

 

 

大好きな義父が生前言っていた台詞。

だから笑った。

哀しくても、苦しくても、笑顔を忘れなかった。

いつしか表情筋が凍りつき、

仮面のような笑顔がアレンのトレードマークになっても……

 

 

「雪は好きか?」

「嫌いだけど……好き……」

「意味わかんねぇな」

「冷たくて寒いから嫌い。

 でも僕の汚いところ……全部覆い隠してくれるから……好き……」

 

 

彼の白く醜い髪の色を綺麗だと言ってくれる人。

汚いはずの肌を心地いいと触れてくれる人。

グロテスクな腕に羨ましいと言ってキスを落としてくれる人。

 

汚れた存在のはずだったアレンの全てを、そのまま受け入れてくれる相手。

そんな相手にアレンは巡り会った。

心の底から眠りに付いたことの無いアレンが、

今はその恋人の腕の中で、心地よい寝息を立てていた。

 

ふと傍らに恋人の存在を感じて瞼を開けると、

そこには美しい黒髪の恋人が、瞳を閉じて眠りに付いていた。

 

神田の寝顔は何度も見ているが、アレンは未だにその光景に慣れない。

綴じられた目蓋に沿って長い睫毛が並ぶ様。

整った目鼻立ちと、染み一つ無いきめの細かい肌。

長く艶やかな黒髪。

そしてすんなりと伸びた逞しい姿態。

何処をどうとっても、自分とは正反対の美しさを持つ彼が

自分の恋人だとは未だ持って信じがたい。

 

熱でかいたはずの汗も、夕べ汚してしまったはずのズボンも、

全部何事も無かったように綺麗に始末されている。

 

―――――これって、全部神田がしてくれたのかな?―――――

 

意識がないところで自分の身体に触れられていたのかと思うと、

今更ながら顔から火が出るほど恥ずかしい。

おまけにその光景を想像しただけで、身体の芯が思わず熱くなってくる。

 

ドクン。

 

心臓が大きく脈打ったかと思うと、見事なほどに下半身が反応する。

日頃神田の白く形のいい手が、指が、

いつも自分をあっけなく翻弄する場面を思い出してしまう。

 

 

『……ほら、ここがいいんだろ?……』

 

 

乱暴で、人を見下してて、けど澄んでいて憂いを帯びている。

神田の声を、手を思い出すだけで、堪らない疼きが身体に巻き起こった。

自分の隣で気持ち良さそうに寝入っている恋人は、

おそらく夜遅くまで自分の看病をしてくれていたにちがいない。

アレンの額に乗ったタオルが、まだ心地いいままなのがその証だ。

そんな恋人が寝ている横で、淫らな想像を膨らませ己を昂ぶらせている自分は、

なんておぞましい存在なのだろうと思わずにはいられない。

 

神田だって疲れているんだから、起こさないようにしなくちゃ。

一人でこっそり済ませてしまおう……

 

そう思い立ったアレンは、隣で寝ている神田に背中を向けた。

そして、神田に気付かれないように己のズボンの中にこっそりと手を忍び込ませ、

その中でそそり立つモノにゆっくりと触れた。

 

 

「……つっ……」

 

 

声を押し殺し、神田を起こさないように頑張ってみる。

だが、あまり広くないそのベッドでは、

背中の存在に自分の行動を悟られないようにすることは至難の業だった。

やはりこのままでは無理がある。

思うように自慰行為に浸れないことを自覚したアレンは、仕方なく手の動きを止めた。

こうなったらトイレかシャワー室にでも移動して済ませるしかないだろう。

そう諦めた矢先だった。

 

 

「……ひゃっ……!」

 

 

いきなり背後から抱きすくめられ、首筋にキスを落とされる。

 

 

「何ひとりでよがってんだ?

 昨日一回抜いたぐらいじゃ、足りなかったか……?」

「そっ、そんなことないよっ……!いつの間に起きてたのっ?」

「ん?お前が目を覚ましてすぐだ。

 そんなに俺の寝顔見るのが楽しいのか?寝顔見て欲情するほど……」

「ばっ……そんなこと、あるわけないじゃないですかっ!」

 

 

必死で否定しようと思ったが、いきなり思い切り抱きしめられて

耳たぶを甘噛みされる。

ねっとりとした舌で耳から首筋までを舐めあげられると、

悲鳴にも似た喘ぎ声がアレンから漏れ出した。

 

 

「あ……ぁぁっ……」

 

 

そのまま顎を抓まれ、如才なく唇を奪われる。

 

 

「んっ……んんっ……!」

 

 

いつもの事ながら、神田の動きには隙がない。

一つの動作を起こすときには、もう既に次の動きが予定されていて、

まるでためらう隙を与えないように、事を進行させていく。

 

 

「……丁度いい……

夕べお前の身体に触れて、俺も自分を持て余してたところだ……

熱も下がったことだし、朝の余韻でも一緒に楽しむか……」

「……カンダ……あっ……」

 

 

何か言いたくて軽く唇を緩ませると、すぐにその隙間から神田の舌が侵入する。

はじめは虚栄心から自分の舌を奥に引いてみたが、

それを許さないと言わんばかりに、強引に神田は舌を絡ませてくる。

心地よく吸啜され、己の感じる場所を刺激されるたび、

アレンもすぐに緊張を解き、神田の舌に応えるように舌を絡ませていった。

 

互いの気持ちを確認しあうような神田との口付けが、

アレンは何よりも好きだった。

普段あまり雄弁に物事を語らない彼の唇が、

自分を愛しいと言ってくれているように感じて思わず泣きそうになってしまう。

それは何度も情事を重ねた今でも同じで、

アレンは神田にキスをされると全身の血が歓喜に震えるのを感じずにはいられない。

 

 

「ふうっ……んっ……」

 

 

互いの舌を絡みつかせる程に脳まで刺激がダイレクトに伝わり、

全身の力が抜ける。

それと相反するように、身体のある一部だけは異常に緊張を高めていった。

 

口付けを止める事をせず、片手は器用にアレンの胸の突起を玩ぶ。

すでにもう反対側の手は、器用にアレンのズボンの中に入り込み、

彼の大きくなったものを弄り出していた。

神田の甘い髪の香りが鼻をくすぐり、全身に染み渡る。

まるで媚薬にでも酔いしれたかのように、

アレンは神田の行為全てにその身を委ねていた。

 

神田の手の中でゆっくりと扱かれているアレンの分身は、

先程の自慰時とはうって変わったように表情を一変させ、

全体をヒクつかせながら先走りの液で神田の手を濡らしていた。

敏感になってきた身体は、神田の手が何処に触れようとも

その刺激をダイレクトに快感として伝え、鳥肌を立たせる。

 

 

「モヤシ……何だか今朝は偉く敏感じゃねえか?」

「……そっ……んな……ことっ……」

 

 

普段任務がない時で、教団内に二人揃っている時は、

それこそ日を置かずに互いを求め合っているというのに、

ここ数日はアレンの体調不良もあってそうしていないのだから止むを得ない。

それは神田の方も同じで、アレンの身体に触れながら、

既に自分自身もその昂ぶりを持て余していた。

 

息が苦しそうに上がるアレンの唇をようやく解放した神田は、

その唇を徐々に首筋から鎖骨、胸元へと移動させた。

白い胸元に咲く桜色の莟を口に含むと、舌先で軽く転がしたり

甘噛みしてみたりする。

すると、アレンの口から艶っぽい声が漏れ出し背中を撓らせた。

 

 

「……かっ……かんだぁ……」

 

 

胸元には先日付けたばかりの紅い痕がその名残を表している。

神田はその痕の上にもう一度唇を這わせると、

同じようにきつく吸い上げ、再びその色を濃く印した。

 

 

「そ……なにしたら……傷になっ……ちゃ……」

「いいんだよ……傷になったらなったで、俺はその方がいい……

 できれば……本当に傷になって、お前が一生忘れられないようになればいい」

 

 

―――――その額のペンタクルのように―――――

 

そう言いかけて、神田は言葉を飲み込んだ。

自分はアレンをどんなに想おうと、その印を身体に刻む事は叶わないだろう。

だったらアレンの心が、自分を求めて止まなくなるように。

何度でも身体を重ねて、快感を共有して、アレンの身体が自分を求めて疼くように。

じっくりと、じんわりと、時間をかけてアレンの心を蝕んでいけばいい。

今はまだその第一歩に過ぎないのだから……

 

アレンから漏れ出す透明な蜜を啜り、先端を舌先で舐めあげる。

それにぴくりと反応して、アレンは息を弾ませた。

柔らかな双丘をゆっくりと掌で撫でながら、神田は指の腹で小さな蕾を刺激する。

神田の口がアレンのモノを口に含む頃には、

アレンの頬は上気して紡ぐ声も絶え絶えになっていた。

今にも弾けだしそうな勢いを抱えて、

アレンの昂ぶりは神田の口の中でその容量を増す。

 

 

「……あっ……あぁぁっ……カンダ……もうっ!」

 

 

神田が舌先でもうイケと言わんばかりにその先端を弄ると、

アレンは小さな悲鳴のような声を出し、その迸りを神田の口内に放った。

小刻みに身体を震わせると、すぐに全身の力を抜き弛緩させる。

 

神田は何の躊躇いもなくその液を飲み干し、

今度は今までの行為で湿りを帯びた後吼の蕾を弄りだした。

つぷりという音を立て、ゆっくりとその中へ指を差し込むと、

今さっき果てたばかりのアレンが、また甘い声を紡ぎ出す。

 

 

「……つっ……ふぅっ……」

 

 

いつも感じる場所へと指を進め、軽く擦るだけで、

アレンは堪らずに大きく息を吐き出した。

 

 

「……はぁっ……あっ……だめっ……」

 

 

ダメだという軽い拒否は本当の意味を成さず、

もっとしてくれという懇願の意味を込めていると既に神田も熟知している。

今度は指を増やしてさらにその場所を弄ってみると、

アレンは身悶えしながら神田の首にしがみついてきた。

 

 

「くうっ……ふぅんっ……」

 

 

堪らないと言わんばかりに顔を歪め潤んだ瞳で神田を見つめる。

 

 

「……もう……いいかもな……」

「……う……ん……来て……かんだっ……」

 

 

神田自身にも正直もう余裕など無かった。

病み上がりだからとアレンの身体を気遣う半面で、

どうしようもなく激しく突き上げ、犯してしまいたいという衝動に駆られる。

 

もう十分に神田を受け入れる準備をしていた蕾は、

それでも挿入し始めはきつくて、アレンは声にならない悲鳴を上げる。

小さく震える背中を宥める様にさすりながら、

神田はアレンの最奥までと突き進んだ。

 

はぁはぁと小刻みに息を上げているアレンが少し落ち着きを取り戻したのを見計らい、

今度は神田がその欲望をアレンにぶつけ出した。

何度も繰り返す律動の中、ある一部の場所を掠められる都度、

アレンは全身を駆け抜ける快感の波に打ち拉がれる。

 

 

「あっ……あぁぁっ……!」

「……っっ……つぅっ……」

 

 

アレンが感じる度にその内腔をきつく締め上げられ、

神田は低い呻き声をあげ、表情を歪ませた。

そう遠くない解放を控えて、互いの身体をきつく抱き合う。

 

徐々にその動きは激しさを増し、アレンにも神田が熱の解放を

間近に迎えていることが伝わっていた。

こうして激しく求められることにアレンは不思議な安堵感を覚える。

多くを語らず、未だに神田のことを沢山知っているわけではなかったが、

それでも欲情したときに見せる瞳とか、汗の臭いとか、うわずった声など、

他の誰もが知りえないことを自分が知っていると思うだけで優越感に浸れた。

 

そして今まで自分が感じたことの無い快楽を神田が与えてくれる事も事実で、

アレンにとって神田という存在は、今や無くてはならないものだった。

できる事なら身体だけでなく、心も何もかも独り占めにしたい。

いつもそう思っているのに、どうすればそう出来るのかその術を知らない。

 

いや、本当は神田の心も身体も全部、すでにアレンの手中にあったのだが、

当の本人だけはそれを知らないと言った方が正しいのかもしれない。

それは神田にとっても同じことで、互いを求める気持ちが大きければ大きい程、

その真実が見えなくて、漠然とした不安に駆られてしまうものなのだ。

 

 

「……かんだっ……全部ちょう……だい……

 神田のぜんぶっ……ボクにっ……!」

「ああ……好きなだけくれてやる……

 その代わり覚えておけ……

 お前のことも、俺が全部もらうんだってことを……」

「……う……んっ……か……んだっ……!」

 

 

心身共に互いを求め合い、身体の奥深くで繋がり合う。

その言いようのない快楽が二人を支配する。

 

アレンが2度目の欲望を解き放つ時、神田も時を同じくして

その中に熱い迸りを解放した。

はぁはぁという荒い息遣いだけが部屋の中に木霊する。

部屋の外の冷気とは裏腹に、アレンの部屋の中だけは二人の熱気を帯びていた。

互いの身体が離れることを惜しむように、

二人は中々離れようとしない。

 

 

「……また汗かいちまったな……」

 

 

汗で頬に張り付いたアレンの紙を神田が指で優しく掻き揚げる。

そのしぐさの一つ一つが愛しく、幸せを感じてしまう。

 

 

「まだ……離れたくない……」

「……?……いいぜ?

 どうせ今日はお前が風邪ってことで任務からは外してもらってる。

 熱も下がったみたいだし、なんならこのままずっとこうしてても……」

「……カ……カンダ……?」

 

 

アレンは途端にしまったと思った。

神田はというと妙に楽しそうにアレンの顔を覗き込んでいる。

そして、驚いた表情のアレンを見てふっと笑った。

その笑顔がアレンの夢の中の笑顔そのままだったので、アレンは驚いて更に目をむく。

 

 

「……どうした?お前から離れたくないって言い出したんだぞ?」

「……そう……ですけど……

 いえ、こうしていてもまだ夢みたいだなって思ってしまって……

 ……それだけ幸せだってことです……」

「……へんな奴だな……」

「……嫌な言い方……」

 

 

そう言い合って、ふと微笑みあう。

 

―――――神田がこんなに優しいなら、たまには風邪もいいかもな―――――

 

そんな場末的なことを考えてしまうアレンだった。

窓の外には、真っ白な雪が音もなくただ降り積もっていた。

愛し合う二人を、まるで何かから覆い隠しでもするように……

 

 

 

 

 

 

 

 

≪あとがき≫
こんなやわな裏小説にお付き合いくださいまして、
本当に有難うございましたっm(_ _ ;)m
本当はもっと激しいのを描きたいと思いつつ、
一応アレンくん風邪だしな……とか考えちゃって、
ひたすら甘い表現になってしまいました( ̄▽ ̄;)
これじゃあ表表示でもイイジャン……みたいな感じですが、
まぁ、ご勘弁下さい;
とりあえず、今回はサービス期間として表からリンク貼りました;
裏を見つけられなかった方、アドレス確保しておいてくださいネ(^^;)
いちおうオフ本はかなり激しい表現にしておりますので、
もっと激しいものをご希望の方は是非そちらもご覧いただければと思いますv
Dグレでのサークル参加は来年2月のイノセントワールドからになります♪

(いちおうアピールv)

 

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